ワーファリンを飲んでいる方の抜歯について
本日は少し専門的なお話をさせていただきます。
心疾患・脳血管障害・血液疾患をお持ちの方は血栓ができるのを防ぐために、抗凝固薬のワーファリンを飲んでいらっしゃる場合があります。
当然血が止まりにくくなりますので、歯科において抜歯など観血的な処置が必要な場合には注意が必要です。
そこで処置前にお薬を止める必要があるかないかを検討させていただきます。
私が口腔外科に勤務していた15年くらい前はPT(プロトロンビン時間)TT(トロンボテスト)というデータをもとに判断していました。
しかしこのテストはデータにばらつきがあることがありました。
そこで近年は国際的に評価を標準化するためにPT-INRというデータが用いられるようになりました。
このデータがわかれば客観的にリスクが判断できます。
ところでワーファリンの服用を中断すると脳梗塞などの血栓塞栓症を誘発する危険性があります。
一度中断すると1%の確率で塞栓症を生じ、しかも発症すると重篤になるとの報告があります。
ですのでできればワーファリンを飲んだまま抜歯したいものです。
一般に欧米ではワーファリンはPT-INR3~4.5でコントロールされていますが、この領域では出血性合併症(数値が高いほど血が止まりにくい)のリスクも出てくるため、日本ではPT-INR3以下の場合が多いようです。
そして一般的にPT-INR3以下であれば、ワーファリン内服下に抜歯しても問題はないというのが、現在の国際的なコンセンサスです。
ということは殆どの方はそのままで大丈夫ということになります。
もちろん縫合や止血剤、場合によっては止血シーネなどは使用したほうがよいと思われますが・・・
またワーファリン以外の抗血小板薬(バイアスピリン・バファリン・パナルジン)などは、最近の論文で安定した血小板機能低下作用を有しながら出血をほとんどしないとされていて、抜歯時に中止する必要はないとされています。
ワーファリンその他の抗血栓療法を受けておられる患者さまはぜひ覚えておいていただきたいと思います。
安心・安全な歯科治療のために・・・
ちょっと今日のお話は難しかったですか・・・
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